こんにちわ、僕です。


かつ20代の頃、僕にも夢がありました。それは舞台の俳優さんになることです。所謂、演劇とか劇団とか言われるアレです。今さら説明の必要もないと思いますが。

僕は中学生のころから演劇部に所属していました。高校では廃部寸前だった演劇部を立て直し、大学に入ってからも演劇のサークルに所属して、授業にも出ずに公演の稽古や準備に明け暮れていました。

大学を出てからも就職せず、アルバイトをしながら気の合う仲間と劇団のようなものを立ち上げ、プロになることを夢見て出口の見えない日々を彷徨っていました。

その時期にとあるオーディションに受かって大きな舞台に出させてもらえることになって、生意気にも東京と大阪の2都市で公演させてもらい、ちょっぴりプロっぽい自分を味わうことが出来た時もありました。

それでも、今の今まで舞台活動を続けることが出来なかったのはいくつかの理由があります。


舞台俳優という仕事はコストパフォーマンスが悪い

舞台の上演時間は大体2時間から長いものでも2時間半程度です。その2時間の演劇にどのくらいの準備期間をかけるのかというと、3〜4時間の稽古を2ヶ月間毎日。台本が出来上がっているのが前提ですが。

芸能人の方が出演されるような舞台はもっとコンパクトだと思いますが、アマチュアやセミプロの演劇は大体それくらいの期間が一般的です。故に出演者は日中に生活費を稼ぐためのアルバイトをこなし、夕方から夜まで稽古に打ち込みます。家に帰っても寝るだけ。また朝からアルバイト、の繰り返しが現実です。

稽古時間が4時間として、60日間の期間だとすると稽古に使う総時間は240時間。会社勤めの会社員に換算すると残業なしでおよそ1.5ヶ月分働いたのと同じ計算です。
お給料が額面で25万と仮定すると37.5万円分に相当します。その分を公演で回収しようと思ったら、5000円のチケットを75人に買っていただく必要があります。また、出演者は一人ではないし演出家も含めて少なく見積もって10人と仮定しても750人分のチケットを売らなくてはなりません。
もちろんそれ以外の経費として劇場を借りるための費用やセットの費用、照明や音響の費用など合計すると、どんなに節約しても100万はかかります。その100万を回収するのにチケット200枚分ですから、総計950人もの人に5000円のチケットを買ってもらわないと赤字となる計算です。

例えば、新宿の大塚家具の近くにある「シアターモリエール」はキャパが200人弱なので、モリエールでは少なくとも5日間の公演で全部の席が埋まらないと黒字にならないということです。

無理ゲーです。

今どき芸能人でもない素人の演劇を鑑賞するために5000円のチケットを買ってくれる人なんてなかなかいません。よほどの演劇好きなら別としても、そんな人を1000人近くも集めることはほぼ不可能に近いと言っていいでしょう。

要するによっぽどの有名人でもなければ、舞台役者で食べていくのは不可能に近いんです。満足に食べていけるのはほんの氷山の一角中の一角。それも上記の計算だと額面で25万の計算なので、手取りは新卒のお給料と同じくらいになります。これでは夢がないですよね。


仕事が安定しない

特定の劇団に所属せずフリーの舞台俳優になるとして、安定した生活を送るためには定期的に舞台に出演する必要があるわけです。そのためにはいくつものオーディションを受けて使ってもらえるところを探さなくてはならないわけです。

それをアルバイトと公演の稽古と並行してやろうとするとこれまた無理ゲー、となってくるわけです。


演劇界にはエンターテイメントビジネスに徹しきれない人がかなり多い

上記のように演劇は非常に採算性の低いビジネスなわけですが、そもそも稽古時間をもっと圧縮すればもう少しコストを抑えられるはずなんです。

だけどそういう風にならないのは「時間をかけた作品の方が価値がある」というブラック企業の思想にも似た演劇人特有の考え方があるからだと僕は思っています。その考え方自体は作品創りとして見た場合は間違っていないと思いますが、ビジネスとなると話は別です。黒字を出すためのコストをコントロールできないようではエンターテイメントビジネスとしては成立しません。

また上記のようなブラックな風潮が演劇界に蔓延するのにはもう一つ理由があって、一部の演劇人はどこか文化祭のノリから脱しきれていないからだ、と思うのです。

たくさん稽古して辛いこともたくさんあって人もあんまりこなくて結局赤字になっちゃったけど、私達頑張ったよね、あなたのあそこのシーンの芝居もよかったよ、私も頑張ったでしょ?だから打ち上げたのしいよね!みたいな感じの空気が常に演劇界には蔓延しているのです。少なくとも僕はそういう自己満足的な空気をヒシヒシと感じるのです。

だから演劇というジャンルはいつまで経ってもサブカルチャーの域を脱することはできないし、メジャーなエンターテイメントになりきれないんです。

実は一般のブラック企業にも似たような雰囲気はあって、儲けるよりも何かを達成することに快感を覚えてしまうとやっぱりどこか文化祭のようなノリになっていく傾向は強いのでしょう。


テレビに出たりすると裏切り者扱いされる

なぜか、演劇界の人々はテレビをすごく目の敵にしています。ただ単に自分がテレビに出られないだけなのに自分は敢えてテレビには出ません、みたいな雰囲気を醸し出します。

今でこそ舞台出身の俳優さんは増えましたが、10年以上前は本当に舞台とテレビは断絶されていて全く別世界のようなものでした。

僕は当時、テレビ関係のオーディションも積極的に受けていたので、結構白い目で見られていました。それは結構嫌な思い出です。


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もちろん、舞台をやっていた時の楽しい思い出もたくさんあるし、無駄な経験だとは思っていません。ただやっぱり上記の理由から、30歳以降コレを続けるのは無理があると判断せざるを得ませんでした。

僕と同じ時代に演劇界で活躍していた人といえば、早稲田大学の堺雅人さんですね。僕は明治大学の活劇工房というサークルだったんですが、彼は早稲田の劇研こと演劇研究会に所属しており当時からかなり有名人でした。何度か交流したはずなんですがよく憶えていないのが残念です。

それから惑星ピスタチオのお手伝いをしていたことが少しあって、そこには佐々木蔵之介さんもいました。最初に書いた「とあるオーディション」は西田シャトナーさんの作演出の舞台でした。彼は今「弱虫ペダル」の舞台版の作演出を手がけており再ブレイクを果たしています。

もうひとつ、当時人気だったのは劇団キャラメルボックスでそこの看板役者が上川隆也さんでした。みんな憧れていましたね。

あとは第三舞台に筧利夫さんがいたり、直属の先輩だとハイレッグジーザスの河原さんがいたり、勝手にライバル視していたのは当時まだブレイク前のジョビジョバだったり。

そんな思い出です。


それでは今日はこの辺で。
でわまたー。